「志賀くん?」
早坂さんの顔が邪魔で、志賀くんの表情は見えない。
「家の前でなにやってるの…」
志賀くん、動揺した様子もなく、静かにいう。
早坂さんがようやく私を離してくれた。
「志賀くん…あの…ごめんなさい」
「彼かい?」早坂さんが志賀くんをにらみつける。
志賀くんは、ため息をついて冷ややかにこっちを見つめてる。
「やあ、ごめんな、家のまえで騒いで申し訳ない。別れが惜しくってな。帰って来いって説得してるんだ。こいつ、いい女だろ?俺の物なんだ。悪いけど、返してくれるかな」
早坂さんは、私をつかまえたままでいる。
「夜、遅いので静かにしていただけますか?」志賀くんは、素っ気なく答える。
「志賀くん…待って」
「それじゃ…」
志賀くんは、ドアを開けて家の中に入って行ってしまった。
「志賀くん?待って…」
早坂さんが、お腹を抱えて笑いだした。
「あいつか?友芽の好きなやつか?おい、友芽…なんかの間違いじゃないのか?」
「志賀くん…」
呆れたよね。
完全に…誤解されたかな…
「ありゃ、無理だろ?いくらお前でも、まるで脈なしじゃないか。なあ、あっちは、お前の事なんか、何とも思ってない。お前なんかどうなろうと、知ったことじゃないってさ」」
「わかってる。早坂さん。たとえ、なに言われても、あなたのとこには帰らない」
私は、早坂さんの腕を振りほどいて、家の中に入った。


