あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~

早坂さんが、家の前まで送ってくれた。
彼は、いつもどんなに忙しくても、家まで送り届けてくれる。

「遅くなっちゃったかな」と早坂さん。
ちらっと時計を見て、早坂さんがいう。

志賀くんの家は目の前だった。
「いいえ…大丈夫です。早坂さん、その辺りでいいですから」


「友芽?遠慮するなよ。家の前まで送ってやる」早坂さん、私が志賀くんの家に住んでるの知ってる。


「いえ…大丈夫です。もうここで…」


「どこ?」


「すぐそこの…家で」

早坂さんが立ち止まって、握手しようと手を差し出した。


「いいだろ?これくらい」

「えっと…」

「こんなふうに歩くのも、最後かもしれないじゃないか。ほら…」

「はい」
私は、手を差し出した。



「ありがとうございます…ん?」
体がグラッと揺れた。

あれっ?と思って
振り返った時には、手を引っ張られて抱きしめられていた。

何が起こったのか、理解した時には、早坂さんにキスされていた。


「離して!何するんですか…」
早坂さんの腕から逃れようと、バタバタ手足を動かして抵抗した。


「やっぱり…後悔してる。友芽がいなくて寂しい」
早坂さんは、離してくれるどころか、力ずくで強引にキスを続ける。

「やめて…早坂さん…」


「嫌だ…やっぱり考え直せ。お前のこと抱けないなんて耐えられない」
玄関の明かりがついて
ドアが開き、中から人が出てきた。

「なあ、友芽、恋に落ちるのが一瞬なら、もう一度その瞬間が来るって可能性もあるだろう?一瞬なんて、長い習慣の前じゃ屑みたいなもんだ。ベッドに行けばすぐに思い出す」


「だから、違うって!!離してよ!!思い出すなんてしない。もう、帰って!」


「友芽…何やってんの」
私のすぐ横で、志賀くんの声がした。

志賀くんが出てきたタイミングで、早坂さんが強引にキスをしたから、その姿はばっちり見られたと思う。