あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~



綱引きをして取り合った野菜は、逃げ出したり行方不明になって、数が足りなくなってる。しかも、肝心な肉を買い忘れ、冷蔵庫には、半年以上前の冷凍肉しかないとわかって、うなだれていた。

「俺は、昨日のおかずがあるから、大丈夫」
と志賀くんが言った。

「そっか…そうだね。じゃあ…温めるね」

痛っ…
鍋を持とうと思ったけど、力が入らない。


「指…見せてみろ」

ビニールの持ち手の跡が、赤くなって筋状に残っていた。軽く握った指をほぐすように、彼の指が優しく包み込む。

「こんなになるまで…何でさっさと手を離さないんだ」


「腕をつかまれないように、振り回すの。抱えられた時は…終わりだと思った。

さっきの人みたいに、見てくれがいいと、抵抗しても嫌がってるって、周りの誰も思ってくれないの。

カップルの痴話喧嘩だと思われて…腕をつかまれて、暗い道に連れ込まれたら、もう逃げられない」