あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~



それにしても、本当にいい飲みっぷりだなあ。

くっと顔を上げた時の、顎から首のラインがきれい。男らしく程よく喉仏が出て、ビールを飲むたびに、それが動く感じなんかも好みなんだけど…


でも、この人、やっぱり志賀くんだった。
とにかく愛想が悪い。というかない。

話かけても、会話が続かないから、せっかく男前のいい顔立ちが台無しだ。
それに、志賀くんは、入社してすぐの頃、ひどく口の悪い人だとわかって、私は、なるべく近寄らない事にしてた。

いつもなら、私の両脇を、絵梨とその彼の小野くんとで、押さえてもらって、志賀くんが間違って隣に来ないようにしてたのに…


気分が沈んでるのに。

今日に限って、
真横に彼がいるだなんて…
ほんとついてない。



彼は、面倒臭そうに顔を上げ、ちらっと絵梨の顔を見た。

私も絵梨も、彼の言葉をじっと待ったけど、彼は、他人を気にすることなく、沈黙したまま、無言でグラスのビールを飲み干した。


飲んでるんだから、見りゃ分かるだろ?
大方そう思ってるに違いない。


「志賀くん、お代わり頼む?」
私が尋ねると、

「ああ、頼む…」と小さく返事を返して来た。



志賀くんは、いつもこんな感じだ。


注文したビールが来て、グラスを志賀くんに渡した。
素直に大きなジョッキを受け取る志賀くん。

腕っ節がしっかりしてるなあ。ビールジョッキがお猪口くらいの重さに感じる。