こうして少しの間でも、志賀くんに頼っていることが出来てよかった。これが、一人だったら耐えられなかった。志賀くんに感謝しなきゃ。
今日、店を出るとき…こんなふうになるなんて、思いも寄らなかった。
あんなに無愛想な人の中に、こんな優しさがあるなんて。
「取りあえず、ここでいいか」
私は、背中からどさっと下ろされ、一緒にタクシーを拾った。
もう少し、彼の背中に触れていたかったな。
志賀くんのいう通り、車で行くと私の家からは、あっという間についた。
「志賀くん、
こんな近くに住んでたんだね」
「ああ…」
ごめん、全然知らなかった。
志賀君の家に着いた頃には、12時を回っていた。
私も、志賀君も疲れ果てていた。
「ごめん。こんなことにつき合わせて」
「いいよ。この通り部屋もあるから」
志賀君は一人で一軒家に住んでいた。
もとは家族と住んでいたけど、
志賀君を除いて、家族全員が遠くに住んでいて、お盆とお正月くらいにしか顔を合わせないそうだ。
「シャワー浴びる?」
「うん」
「その間、布団敷いといてやるから」
「そのくらい…」
「今日は、無理だって。すごい顔してるぞ」
「うん」
すごい。志賀くんが私を甘やかせてくれてる。
どうしよう、志賀くんは、ただ普通に話しかけてくれただけなのに、
彼に見つめられるだけで、私は、照れて赤くなった。