「それにしても、酷すぎる。へらへら笑ってるなって」


「ごめん。俺…友芽を目の前にすると…
何言ってるのか、分からなくなって…友芽の前だと舞いあがちゃって。本当に駄目なんだ」

「志賀くん…」

いえ、あの顔が舞い上がってるって…1ミリも見えませんでしたけど。


「友芽を見ると、俺…手を出さないように、抱きしめたくなるのをこうして片方の手でもう一方の手を押さえるのに必死で…手を出さないうちに、友芽から離れなきゃと思って」


「どうしてそんなに遠慮する必要があるのよ。一緒に住んでるのに」


「友芽を傷つけたらどうしようって、嫌がられたらどうしようって」


「どうして私が傷つくって思ったの?こんなに何度も好きだって言ってるのに?」


「だって…友芽は、失恋して、変な男に追いかけられて傷ついてる時に…友芽のこと抱けるわけないじゃないか。君を抱くなら、友芽が回復して、元気になってからと思って…」


「私のこと考えてくれたんだ。志賀くん」
私は、彼に腕を回して、体を近づける。



「こうして志賀くんに抱かれた方が、私、もっと元気になれるって思わなかった?」


「えっ…」


「志賀くんに抱かれることは、傷つくことじゃないよ。癒されるの。だから、あなたに抱きしめられると、私は幸せ」

彼の腕がぎゅーっと私を抱きしめる。