彼は、私に体をぴったりくっつけて言う。
「離れてた四年の間に、何回キスできたかな?」
「数え切れないほど」
「やっぱり、作業なんか後にして早く取り戻さなきゃ」
志賀くんは、また私の唇を盗みに来る。
私の見てないうちに、キスをする遊びを楽しんでいる。
「もう、だめだってば…作業全然進んでないよ」私も本気で抵抗してないんだけど。
「ねえ…志賀くん、ねえ、教えて。私のことへらへら笑ってるって言ったのは、どうして?私を怒らせようとしたの?」
「まさか…違うよ。そうじゃない。
笑ってないでと言ったのは、えっと。その…悲しいのに笑ってないで、その…な、慰めてあげるから泣けばいいって、いいたかった」
「えっ?」
何?この、答えを聞いたときの脱力感ってなに?
「そんなふうに言おうと思って準備してたのに、友芽が俺に向かって、いきなり乾杯って笑いかけてきたから、かける言葉をみんな忘れちゃって…あんなふうに、途中で言葉が切れちゃって…」
「何?それ」
「俺、どんだけ友芽のことが好きなんだろうな。友芽の前だと緊張して言葉が出ない。いつも失敗して友芽を怒らせて、嫌われてると思ってた」
「ごめん。でもあなたの言葉もひどかったもの」
「ん。嫌われないようにうまくやろうとすると、反対に、うまく行かなくて。
それに、早坂さんみたいな男と付き合ってたら、俺なんか相手にならないと思ってたし」
「そう?」
「普通じゃなかったから。
一時的に俺のところに来てくれても、
いつか傷が癒えたら、他に好きなやつが出来て、俺のとこを去っていくと思うと、友芽の気持ちに答えられなかった。
友芽を抱いてしまったら、他の女なんてもう愛せなくなると思って」
やだ、本気でそんなこと考えてたの?
「そんな心配、要らないのに。どこにも行かない。私、ここが好きだもの」
彼の胸に手を置いて言う。
「うん」