あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~


ひどい顔だったから、外出するのに大きなマスクをつけたまま、不動産屋に行った。
「花粉症ですか?大変ですね」


今月末に引っ越すことを伝えて、
「ええ。すみません、急に無理言って」
とお詫びした。

「いろいろ大変でしたね。遠くに行かれるって事で…お役に立てなくて」
私は、丁寧に頭を下げ不動産屋を後にした。


その足でアパートにも足を運んだ。

一番最初に、早坂さんに伝えなきゃいけないのに、言い出しにくかった。
あれだけのことして、早坂さんの腕を振りほどいてきたのに。また戻って来るなんて、何やってるんだか。


もう一度一緒にいさせてくださいなんていう羽目に陥るなんて。


私は、部屋の片づけをして、大家にお礼を言った。大家のお爺ちゃんは、私が部屋にいる間、何かあったらいけないと、そばにいてくれた。


「残念だなあ。友芽ちゃん、いなくなっちゃうのか…」


「すみません。私も移りたくありません」



「で?友芽ちゃんは、どっちの人にしたの?」
不意に言われて、何の事だかわからなかった。


「ええっ?」大家さん、ちゃんと違う人って気づいてた?


「最初に来たのと、後から来たの」


「いえ、その」


「最初に来たほう?彼のほうが友芽ちゃんのこと気遣ってたよね」


「そうですか」
夜這いして嫌われたって言ったら何ていうだろう。


「彼がいるなら安心だ」


「そうでしょうか?」
すぐに彼に嫌われてしまいましたけど。
どうしてわかるんだろう。


「大して意味のない、長年の勘だけどね」

その彼には、さらに振られてしまったのだけど。