△side 微かな金木犀の香りを残して去って行ったあいつ。 「っ、はぁ」 和の吐いた息でやっと我にかえった。 「あいつ、何者だよ…」 司の声が屋上で木霊する。 あいつが一歩一歩歩くたびに背筋が凍えた。 動けなかった。 いつもの、のっぺりとした笑顔ではなく本物の…、 少女のような無邪気な笑顔だった。 「こわ、かった」 目に涙を溜めて崩れ落ちたねおん。 いつもなら、俺が支えてやる役目だが今は… 頭の中には_______ 真野杏珠のことしか考えれなかった。