「だから普段は少し遠回りをして広い道を歩いて行ってるの」


「だからいつもは会わなかったんだな」


歩は毎日あの石段を利用していたのだろう。


「そうだよ。今日に限って寝坊しちゃって、あの石段を使ったの」


あたしはため息を吐き出してそう言った。


「そう言えばさ、俺たち言葉使いも気を付けなきゃいけないな」


「え?」


「ほら、だって見た目女なのに『俺』とか言ってたらおかしいだろ?」


「あぁ、そうだよね」


「俺……じゃなくてあたし、オカマに見られても嫌だしね」


そう言われて、あたしは思わず笑ってしまった。


確かに、歩の外見で女言葉を使っているとオカマっぽくなってしまう。


そこは気をつけてあげなきゃいけないところだ。


「わかった。気を付ける」


それからあたしたちは、クラス内で中のいい生徒たちの名前を言い合った。


毎日見ているからなんとなくわかっていたけれど、念のためにだ。


歩の趣味はロックバンドのCDを聴く事。


好きな映画はスプラッター系。


得意科目は体育で、苦手科目は数学。


あたしは言われることを一応メモしておいた。


これからの生活に必要になる事がるかもしれない。


それでもピンチになった時は、怪我のせいで細かな部分は忘れてしまったという事にすることで、話はまとまったのだった。