その場に取り残された私は、どうすればいいのかも分からないまま、立ち尽くしていた。

青信号は渡って、赤信号は止まる。
大人になるにつれて疎かになるその交通ルールを坂瀬くんが無視した。

そのことについては、特に詳しく知りたい訳じゃない。
でも、さっきは、車の通りも多かった。
それに、怪我をしたことも無理矢理なかったことにしようとしていた。

もしかして、本当に死のうとして...?

そこまで考えて、考え直す。
きっと、そんなことはないはず。

坂瀬くんは、自殺なんて馬鹿な真似、するはずない。

そんな理由のない確信を持っていた。
本人だって言っていた。
そんな勇気はない、と。
私も思う。
坂瀬くんは、自殺なんてしないし、出来ない人に思える。

最も、周りに自殺願望のある人なんていないから、そんな見分ける目なんて持ち合わせてはいないと思う。

でも、なぜか私は確信していた。

じゃあ、どうして?
どうしてあんなことを...?

それは考えても考えても、分からない。

考えられる理由なんて、青柳颯太のせいかもしれない、という曖昧な理由だけ。

二人の関係が分からない以上、これ以上何も分からない。
青柳颯太が原因かも分からない中で、こんなことを考えたって意味がないことは分かっている。

それでも、やっぱり頭の中は坂瀬くんのことだけだった。