次の日の朝。
席に着いてすることもないから眠ろうと伏せようとした瞬間。


「こら遊佐っ、また授業中に寝て!」


頭上から、降ってきた声に、少し驚く。
だけど今はまだ1時限目前。

私は不機嫌な顔で上を見上げた。
そして、そこには悪戯っ子のような笑みを浮かべた坂瀬くんが立っていた。


「あ、坂瀬くん」

「おはよう、遊佐さん。あれ、そんなに俺先生の真似上手かった...?」


私の不機嫌な表情を見て、坂瀬くんは少し焦ったような表情をする。

似てた、というと私が不機嫌になったと思われるし、似てなかった、というとそれはそれで坂瀬くんに悪いような。

そんなことを考えて返事をしないでいると、坂瀬くんはふっと笑った。


「困らせた?ごめんな」

「ううん、少し驚いただけ」

「そっか、ありがとな」


なぜかお礼を言われて、私は曖昧に頷く。


「あ、そうそう。これ、返すね」


坂瀬くんは昨日私が貸した本を私に渡した。
やっぱりあまり興味がなかったのかな。
そう思っていた時、坂瀬くんの口から驚きの言葉が発せられた。


「これ、すげぇ面白かったよ」