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俺と麻妃先輩が出会ったのは、今から9年前の高校に入学したての頃。

その頃は校内で仮入部をやっていて、俺達新入生は部活選びの真っ最中だった。


しかし、俺は最初は部活なんて一切入る気が無く、入学当初から「帰宅部」と仲間達とそう決めていた。

…はずだった。



「…え、部活入んの?」



だけどその緩い希望を、ある1人の仲間に打ち砕かれることになる。


中学時代、所謂ヤンキーだった俺は、その仲間の「部活をやりたい」という一言に驚いた。

…嘘だろ?

でもその仲間の一人は、“サッカー部”と書かれた一枚の紙を手にしながら、言った。



「いや、俺さ、密かに憧れてたんだよな。サッカー部!」

「…憧れてたって」

「カッコ良くね?赤いユニフォーム着て、勢いよくゴール決めて、女子にキャーキャー言われんの」



だから俺、今日の放課後サッカー部の仮入部に行ってみようと思う。

そいつはそう言うと、手に持っていたサッカー部の案内の紙を、大事そうに折りたたむ。


…この学校のサッカー部って、赤いユニフォームなんだ。知らなかった。

っつかもうそこまでチェックしてんのな。