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7年前の、懐かしい思い出。

ゆっくり風呂につかりながら、俺はまた思い出してみた。


それは、俺が生まれて初めて“恋”を知った頃のこと。


当時、吹奏楽部に入部してからもう数ヵ月くらい経っていた俺は、少しずつ部活に慣れていった。

でもそれは、今思うと本当に「麻妃先輩のおかげ」だったんだと思う。

「部活をしに行く」のは口実で、本当は俺にとって部活は「麻妃先輩と逢う場所」でしかなかった。


……で、それに気がついたのは。

サックスという楽器を一緒に始めた、同学年の「青田誠也」の存在があったからだと思う。

俺はそいつの存在を思い出すと、また、一年だった頃のことを思い返してみた……。



…………



「ねぇ、青田くんって可愛くない?」

「…?」



あれは確か、夏に差し掛かったばかりのある日の昼休み。

たまたま吹奏楽部の活動場所である音楽室に足を運ばせた時、俺はそんな会話を盗み聞き…してしまった。


この声は…2年のフルートの先輩?


俺がその声に、音楽室のドアを開けようとする手を止めると…その時中から“麻妃先輩”の声も聞こえてきた。



「うん、わかるわかる。青田くんね、超可愛いよね。小動物みたいで」

「!」