俺がそんなことを思いながらまた漫画に目を戻すと、

その時仲間達が、さっき俺が麻妃先輩に貰ったノートを手にとって言った。



「へー。吹奏楽の教科書ねー」

「!」

「え、どんなの?…わ、字キレーだな」



そして俺はそんな仲間達の言動に即座に反応すると、「返せよ!」とそいつらからそのノートを奪う。

…なんとなく、触ってほしくなくて。



「何だよー」

「ただの教科書だろ?」



するとそんな俺の行動に、仲間達は不満タラタラで……だけど俺としては何故か、ノートを守ることにただただ必死。

こんなふうに避けたら怪しまれるのは目に見えてわかっているけど、これは麻妃先輩に貰ったもの、だから。

……っつか俺、何考えてんだ。


俺は自分でもよくわからない感情に包まれながらも、ノートを片腕に抱えながらそいつらに言った。



「……これ、吹奏楽部の部員にしか見れないノートだから」

「は、そんなんあんのか」

「あるよ。どうしても見たかったら吹奏楽部に入れ」



…ま、入っても見せないけど。


俺は読み途中の漫画を仲間に返すと、「先に教室戻るから」とやがて屋上を後にする。

バタン、とドアを閉めて独りになると、急に沸々と込み上げるのも……よくわからない不思議な感情。




まだ、この頃の俺は確か“恋”という字すら書けなかった。

それが簡単に書けるようになったのは、いったいいつだったかな………。