******


あれから、結局吹奏楽部を辞めるタイミングを逃した俺は、毎日放課後は音楽室に通っていた。

最初は、サックスの吹き方や手入れの仕方等を習っていただけだったけれど、俺はまたすぐに新たな壁にぶち当たっている…。



「三島くん。これがト音記号ね。わかる?」

「?」



今、俺にそう言って教えているのは、三年生のサックスのリーダー、華木先輩。

麻妃先輩と一緒に初めてこのサックスの練習場所である教室に来た日に、華木先輩とは初めてまともに顔を合わせた。

華木先輩は、身長は少し小さめで、いつもポニーテールをしていて、常に明るい先輩。

サックスのメンバーは、この華木先輩を筆頭に、二年の麻妃先輩、一年の俺と青田で構成されている。


……で、一方、俺が新たにぶち当たっている壁とは…



「三島くん、こういう音楽の記号はこれから大事だからね。しっかり覚えて。

後で譜面の読み方も教えてあげる」


「……」

「…返事は?」

「……ハイ」



そう。楽譜の読み方だ。


考えてみれば、そうだった。

音楽の記号は、基本的なものはだいたい中学の頃に習うらしいけど、俺は音楽の授業は常にサボっていた。

だからいきなりこんな譜面なんて見せられても俺が読めるはずもなく、今は全部が暗号にしか見えない。


華木先輩は、そんな俺の頭に記号を全部叩き込ませようと、黒板にいろいろ書いていく。

そして、その少し離れた教室の後ろの方では、別で基礎練習をしている麻妃先輩と青田の姿。


……なんかウゼェ。