初恋フォルティッシモ


ふいに出た名前。

あの人、勇佑の先輩なんだ。

あたしの言葉に、勇佑が呟くように言う。



「…高校の、吹奏楽の時の先輩だよ」

「…サックスの!?」

「そう」



確か、前に少しだけ聞いたことがある。

勇佑から、高校の時は吹奏楽部に入ってたって。

勇佑は一見楽器とかやるように見えないから、ちょっとびっくりしたけど。


あたしが思い出してその楽器の名前を口にしたら、勇佑が頷いた。



「…とにかく、今はもうこの先輩とは何でもないから安心しろ」



そう言って、くしゃ、とあたしの頭を撫でてくれる。

…嬉しい。けど、



「…じゃあ勇佑、ユリナのこと誰よりも愛してる?」

「!」



たまにはそういう言葉が聞きたくて、ユリナはプリクラを片付ける背中にそう聞いてみた。

だけど、勇佑は背中を向けたまま答える。



「…言わなくてもわかるだろ」

「…」



って、そんなんじゃ意味ない。

ちゃんとした言葉が欲しいのに。