初恋フォルティッシモ


ユリナがそう言ったら、勇佑は「つまんねー」なんて脱衣場を後にしていく。

あ…待って、って言ったのに。

出ていくのも早い。


チャンスだったかな?


結局その後は、勇佑がまたここに来てくれることはなかった…。




……………




お風呂から上がると、勇佑は居間でテレビを見ていた。

勇佑と目が合うなり「待ってたのに…」ってユリナが言うと、「入るなって言ったじゃん」、なんて言われる。



「…待ってって言ったんだもーん」

「もーん、って子どもか。まぁ……また今度な」



勇佑はそう言うと、居間から離れてお風呂場に向かう。



「今度っていつ!?」

「…そのうちな、」

「そのうちって!?来週とか!?」

「来週は忙しいから」

「…」



口癖のようにまたそう言われ、脱衣場と廊下を繋ぐドアを、バタン、と勇佑に遮られる。


…出た。勇佑の「忙しい」。

ってかさ、今日だって「忙しい」って言ってたはずなのに、こうやって逢う時間ちゃんとあったんじゃん。


ユリナはドアの前で「ケチ」って呟くと、居間に戻った。