…よかった。お母さんが来て。
そう思って、「ビックリしたね」なんてあたしが笑って三島くんに目を遣ったら、一方の三島くんは何故かさっきの二人の背中を浮かない顔で眺めている…。
「…?」
…あれ、どうしたんだろう?
その横顔を見てあたしは独り首を傾げるけれど、その理由を知るよしもない。
考えたってもちろんわからなくて、「三島くん?」と数回くらい彼の名前を呼んだら、三島くんはやっと我に返って「ビックリしましたね」なんてちょっとぎこちない笑顔を浮かべた。
…それ、あたしがさっき言ったセリフ。
何を考えていたんだろう?
「どうかした?」
「いえ、何も。若い母親だなぁって思って」
「…そっか」
気になってあたしがそう聞くけれど、三島くんはそう言ってはぐらかす。
そんな顔、だったかな?もっと、何かこう…複雑そうな…。
だけどそれ以上は聞けないから、あたしは三島くんに「じゃあまたね」と手を振って、ようやく改札を抜けた。
「お疲れっす」
「お疲れ様」
しかし、抜けてしばらくした後に気が付いた。
…あ。そういえば。
三島くんがあたしに「言いたいこと」、聞きそびれちゃったな…。

