そのいきなりの声に、あたし達はビックリしてお互いから更に離れる。
まさかこんなふうに、誰かに言われるなんて思ってもみなくて。
慌てて声がした方を見遣ると、すぐ傍にはあたし達を興味深そうに見つめる4、5歳くらいの男の子が立っていた。
「!」
その声に、隣にいた三島くんがビックリしつつも、「ま、まだカップルじゃないんだよ」と男の子と目線を合わせてそう話す。
…この子、どこの子だろう。
そう思って、
「ね、ボク誰?パパかママは一緒じゃないの?」
あたしがそう聞いたら、その時少し離れた場所から女の人の声がした。
「こらユウタ、何してるの」
「!」
その声に顔を上げると、そこにはこっちに向かって歩いて来る女の人の姿があって。
お母さんかな?…この子、ユウタくんっていうんだ。
あたしがそう思っていたら、まだ若い母親がその子の手を引いて言った。
「切符を買ってくるから待っててって言ったでしょ?」
「だってー」
「もー。早く行かなきゃ、パパ待ってるんだからおいで」
「はぁい」
そして母親はあたし達に目を遣ると、「すみません」とその子を連れて離れて行った。

