確か二人で中華料理食べに行った時もそうだったけど、あたしって緊張したらほんとに口数が多くなる。

三島くんは、よく喋る女は……どうなのかな。

だけどそれなりに会話は弾んでいるし、二人で同じものをオーダーしたあとちょっと微笑み合った。


…ああ、ヤバイ。

今のこの瞬間、すっごく幸せ。


………けど。



「……あの、先輩」

「うん?」



しかしその幸せは、やがて三島くんによって打ち消された。



「…休憩の時に言ってた、“聞きたいこと”…なんすけど」

「ああ、うん。気になってた。なに?」


「えと…麻妃先輩って……


合宿の時のこと、覚えてますか?」


「……え、」

「吹奏楽の時の」

「…、」



…合宿…


その一言で、あたしはその時経験した出来事を瞬時に思い出す。

忘れるわけない。

あたしが今までで一番、ショックだった出来事。



“も、きらい”

“え、”

“あたし、三島くんキライ…っ”



三島くんの合図で、あたしの中で鮮明に蘇る。あの時のショックが。

あたしが思わず黙っていると、三島くんが言葉を続けた。



「あ…嫌なこと掘り返すようで申し訳ないんすけど、俺はずっと謝りたかったんです。麻妃先輩に、あの時のことを」

「…」

「麻妃先輩に会えなくなってからも俺、ずっとそればっか頭に引っ掛かってて。先輩があの時…俺を呼び出した理由も、途中でちゃんとわかったのに」

「…っ」