「…予想以上にショックです」

「そう、だな。気持ちはわかるよ」



…本当はもう、終わらせなきゃいけない関係。渡辺部長とのこの関係。

だったら、三島くんを彼女から奪った方がマシなのかもしれない。

でも、この空間があたしにとって居心地が良すぎる。

渡辺部長は、あたしの心の傷や隙間を知り尽くしているから。


そして、それはあたしもそう。



「渡辺部長は、奥さんとは…」

「ああ。相変わらずだよ。君みたいな進展はない」

「…そう、ですか」



渡辺部長は、奥さんのことを凄く愛している人。

だけど、奥さんは違うらしい。

愛しているはいるけど、奥さんにはもう結婚前から、別に想い人がいるんだとか。

そもそも奥さんはその人との結婚が決まっていたけど、その人は運悪く結婚前に事故で他界。

その後お見合いで渡辺部長と知り合って、結婚に至ったんだとか。

奥さんは普段そんな姿は見せないけれど、渡辺部長は奥さんがたまに独りで泣いている姿を見かけると言った。

昔の彼の、写真を手にして。



「…渡辺部長が羨ましいです」

「どうして?」

「だって、それでも奥さんとちゃんと深い繋がりがあるじゃないですか。結婚っていう」

「そんなのただの言い訳でしかないよ。見た目が繋がっているだけだ。それなのに中身がスカスカじゃいくら“結婚”してても意味がない」

「まぁ、それは……そうかもしれないですけど」