「あたし、きっと…いや絶対、三島くんが思ってるような女じゃない」
「!」
「だから、一緒にはいられないよ」
あたしは勝手にそう言って、顔を背けながら三島くんから離れる。
…そう。
あたしは三島くんが思ってるような女じゃない。
だって、渡辺部長とのこともあるから。
良い先輩にすらなれない。
人の大事なものを簡単に奪っちゃうの。
だから…もうこれ以上、誰かの大事なものを壊したくない。
三島くんは今、どんな顔してるかな?
そう思ってまた三島くんに目を遣ってみたら、三島くんの表情はかなり曇っていた。
そんな暗い顔…三島くんのそんな顔、今までに見たことがない。
ああ、また奪っちゃいそう。
だけど我慢して、あたしは三島くんに言った。
付き合うつもりはない、と。
でも、三島くんの気持ちは嬉しかったのと、それが夢みたいとも伝えておいた。
…上手く笑えてるだろうか。
泣き出しそうなのを誤魔化すように、あたしは今度こそ改札を抜けた。
…三島くんは、もう追いかけてこない。
あたしはいつもの電車に乗ると、深く深く…息を吐いた。

