「だって…三島くんには、ちゃんと彼女がいるでしょ?」
「!」
抱きしめているその腕をほどいてあたしがそう言うと、三島くんは案の定びっくりした顔をする。
嘘を見破って、その理由を言ったけど、三島くんは自分でもその癖に気づいていなかったみたい。
…嬉しかった。
「…じゃあ、あたしもう行くね。お疲れ」
「…っ」
…チャンスなのに。
何を良いコぶっているんだろう。
奪おうと思えば、今すぐにでもこの状況…奪えるのに。
でも、あたしが三島くんの彼女の立場だったら、嫌だから。すっごく。
だから軽く手を振って背中を向けると、その瞬間にまた三島くんが言った。
「彼女とは別れます」
「!」
その言葉に、あたしは歩き出したばかりの足をピタリと止める。
その台詞は、思ってもみなかった甘くて…切ない台詞。
さすがに、スルーできなかった。
「…え…?」
…まさか…。
三島くんが、そんなにあたしのことを…?
いや、違う。だって彼は…。
…彼、は……?
だけど、あたしがびっくりしたままでいると三島くんが言葉を続けた。

