渡辺部長は何故か自信満々にそう言って、ニッコリ微笑んだ。
…そんなわけない。
だって、悩むことなんてもう…何も。
逢えただけできっと幸せだから。
だからあたしは、三島くんにちゃんと自分の気持ちを伝える覚悟を決めた。
今までは誰かに邪魔されたり、三島くんに言わせて貰えなかったり、待ってたのに三島くんがなかなか来なかったりで…言えなかったから。
そう思って覚悟を決めていたら、会社のロビーでまた偶然三島くんと出会して、夕飯を一緒に食べようとあたしから誘った。
そしてあわよくば…三島くんの隣にこれからずっといられたら…彼女として。
しかし…そう思っていたら。
「…あ、もしかして既に誰かと約束してる?」
「え?あ…」
「ってか、付き合ってる彼女に悪い、よね。ごめん、気にしないで」
「!」
なんとなく、“付き合ってる彼女”の台詞は答えが怖いから、あたしが冗談ぽく言ったその時。
三島くんが、慌てた様子で言った。
「っ…付き合ってる彼女なんていないっす!」
「!…え」
…嬉しかった。
もしかしたらその嬉しさも、顔に出てしまっていたかもしれない。
けど、そのあと思い出した。
確か三島くんは、嘘を吐く時瞬きの回数が多くなる。で、声もちょっと震えるんだ…。
それは、あたしが吹奏楽部の時に見つけた三島くんの癖。
まだ頭のどこかで覚えていたあたしは、それを思い出してショックを受けた。
…どうりで、瞬きが多かった…ワケだ。

