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「…同窓会…?」



懐かしい、昔の仲間の声。

その言葉に、あたしは電話越しに首を傾げる。


今日は、ちょうど会社が休みの日。日曜日。

独りでマンションにいたら、いきなり電話がかかってきて、何かと思えば今度地元で行われる吹奏楽部の時の同窓会の話だった。


そう言えばハガキがきてた気がするけど…全然見てない。だって最近いろいろあって疲れてるから。

だけどあたしに電話をかけてきたそのコは、あたしの言葉に頷いて言った。



「そう!吹奏楽の時の同窓会!麻妃のところにもハガキきてたでしょ?」

「え?あー、と…」

「華木先輩も出るって!麻妃は?」



その問いかけに、あたしはスケジュール帳を確認する。

…あ、空いてる。

ってか、ちょっと待てよ。吹奏楽部ってことはもしかして…。



「…あのさ、あたしの後輩は?来る?」

「後輩?ああ、青田くんっ?懐かしー!」

「えと、じゃなくて…三島くん?だっけ?」



…嘘つき。

名前とか忘れるわけないのに、わざと忘れかけてるフリをする。

あたしがその人の名前を口にすると、電話の向こうでまた声がした。



「え、…っ、あー!三島くん!?えー、来ないんじゃないかなぁ。だって三島くんて、途中で部活辞めたじゃん」

「…そ、そだね」



…そっかぁ。来ないのか。なぁんだ。


その後は少しだけ思い出話をしたりして、やがて電話を切った。



高校を卒業してから、約7年後。

あたし、藤本麻妃は、今だに高校の時の恋を忘れられずにいる……。