初恋フォルティッシモ


俺は店の中にいる麻妃先輩を気にかけながら、ユリナを宥めるように言った。



「…浮気じゃないけど、今は無理」

「なんで!」

「用事が終わったらそっち行くから、今は黙って待ってろ。な?」

「……仕事なの?今日初日だって言ってたのに」



…仕事じゃない。

けど、仕事だってことにしておくか。

ちょっと無理があるかもだけど。


俺はそのユリナの問いに頷くと、言った。



「そうだよ。だから待ってろ…終わったら行くから」

「絶対だよ?」

「ん、」



…俺は、最低…だな。


ユリナの言葉にまた頷くと、俺はやがて電話を切って店に戻った。

…ユリナとは別れようか。

そんなことを考えながら麻妃先輩が待つ個室に戻ると、そこにはもう既に注文した料理が揃っていて。

麻妃先輩は、まだ手をつけずに俺を待ってくれていた。



「…あれ、先輩先に食ってても良かったのに」



そのことに少しびっくりして俺がそう言うと、麻妃先輩が言う。



「んー、食べようかと思ったんだけどね、トイレだからすぐ戻ってくるかなぁって」

「…あ、すみません。電話もしてて」

「あー、だから遅かったんだー」



なんとなく、そんな気はしたんだよねー。


麻妃先輩はそう言うと、「じゃあ、いただきます」と手を合わせた。