初恋フォルティッシモ


「……」



まぁ、麻妃先輩が純粋に信じてくれたから良しとする。

麻妃先輩は予想以上に笑ってるけど、一方の俺は内心胸を撫で下ろす。

…本当のことは言わないでおこう。

そう思いながら、麻妃先輩の隣に並んだら…ふいに麻妃先輩が俺の方を見て言った。



「…ね、三島くん」

「?」

「三島くんも、夜ご飯まだだよね?」

「…そうっすけど」

「じゃあ、今から一緒にどう?」

「えっ、」



麻妃先輩はいきなりそう言うと、俺の気持ちを知ってか知らずか、ニコリと笑って俺の返事を待つ。


…マジ?


まさかの誘いに俺が固まっていたら、麻妃先輩が何かに気がついたように言った。



「…あ、もしかして既に誰かと約束してる?」

「え?あ…」

「ってか、付き合ってる彼女に悪い、よね。ごめん、気にしないで」

「!」



麻妃先輩はそう言って、先に会社を出る。

俺はその姿を追いかけながら、慌てて首を横に振った。



「っ…付き合ってる彼女なんていないっす!」

「!…え」

「先輩、何食いたいんすか?俺奢りますよ!」



…言ってしまった。

奢りたいのはマジだけど、彼女は……


だけど俺の「彼女なんていない」の言葉に、麻妃先輩の表情が心なしか明るくなった気がした。