「…はー」
どこにもいないことにやるせなさを感じてエレベーターに乗ると、1階に到着するまで俺は疲労で壁に寄りかかった。
…少しだけ、大人になったはずが、多分俺は学生の頃から変わってない。
実際に麻妃先輩を目の前にすると何も言えないくせに、自分の都合だけ優先して空回りするんだ。
…そう考えたらふと、昔部活が終わったあとに麻妃先輩が青田の練習に付き合っていたのを、俺が邪魔して連れ出した過去を思い出した。
情けないほど変わってない。
俺はそう思うと、ようやく1階に到着してロビーに出る。
未だにユリナからの電話に気づかないまま、もう何度目かのため息を吐きかけたら…その時少し離れた場所からやっと愛しい声がした。
「あれ?三島くん」
「…!?」
「どうしたの?今帰り?」
「…麻妃、先輩」
その声に声がした方を見遣ると、そこにいたのはまさかの麻妃先輩で。
俺がびっくりして立ち尽くしていると、麻妃先輩が俺の目の前までやって来た。
…何で…?今までどこにいたんだよ…。
「遅くない?三島くん!何してたの、」
「…麻妃先輩こそ」
「え、あたし?あたしはー…ほら、昼間経理部の渡辺部長に仕事で呼ばれてたから、8階の会議室に。その関係で」
「…」
麻妃先輩はそう言うと、「疲れたね」なんて笑う。
いや…嘘だ。
嘘だ、先輩。
8階の会議室になんてどこにもいなかったじゃんか。

