「……」



ユリナからのラインを読んで、返事をせずにそのまま目を瞑る。

あれからとぼとぼとマンションに帰って来た俺は、何にもやる気が起きなくてそのままベッドにダイブした。


…麻妃先輩のあのシーンを見て、こんなにショックを受けている自分に一番ショックだ。

俺はあのあと電話の途中だった後藤と一言二言話してから電話を切り、なんとかここまで帰って来た。

……記憶はないけど。


そして今は、あの時は確信までしていたのに、実はあの人は麻妃先輩じゃなくて、似た人だったんじゃないか…?

それか、あの男はただの父親なんじゃないか…?(凄い無理があるけど)

なんて、現実を受け入れられなくて、そればかりを考えている。


…いや、でも、そもそも俺だってユリナっていうちゃんとした彼女がいるじゃんか。

こんなにショックなのはおかしいだろ。


そして俺はやがてそう自分に言い聞かせると、気を紛らわすべく適当にテレビを点けた。

なるべく笑える楽しいバラエティー番組にチャンネルをあわせると、ため息を吐きながら風呂場に向かう。


…だけど、その間もまだ頭の中に浮かぶのは、さっき見た衝撃的なシーン。



「…っ…」



風呂を沸かして居間に戻ると、俺はソファーに座りながらなんとなくテレビを眺めた。


…麻妃先輩。

“あの頃”俺がちゃんとしていたら、今は隣に先輩がいたんだろうか……。