老人は一冊の本を持ってくると、幻想の都の話を子狐に聞かせた。

子狐が横たわっていたあの小川の近くには心の綺麗な者のみが見える「幻想の都」という異世界に行ける伝説があるらしく、その異世界は不況な現実とは違い沢山果物や木の実、動物がいるらしいのだ。

老人は子狐が幻想の都に行き、果物を自らに恵んだのだと語った。
そんな夢のような話があるのかと思った子狐だったが、ここは老人の事を信じることにした。

老人は重々しそうな顔をすると、こう呟いた。

「…最近はのお…食料難が続いてのぉ、狩りをし、動物を食べる者も出てきたのじゃ…そのせいで『幻想の都』が見えなくなり、信じるものも居なくなったのじゃ…耳の痛い話をしてすまんのお、子狐や…頼みたいことがあるのじゃが…頼まれてくれるかい…?」

子狐は小川での恩を返す為にも、老人に頼まれることにした。