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「ん〜美味しい〜。」


優衣が苺やブルーベリー、生クリームがいっぱいのったパンケーキを頬張っている。

小さな唇にクリームなんかつけちゃって可愛い///

甘いものがあまり得意ではない私は、とってもシンプルなパンケーキを食べていた。

こういうところが女子力に欠けるのかも知れないな…。

私たちは学校の帰りに、最近できたパンケーキのお店に来ている。

お店の中はウッドテイストな内装で、観葉植物がたくさん置いてあり、白いふかふかのソファーにお洒落なクッションもあって、とても素敵だった。

「ふぅ…。」

優衣がロイヤルミルクティーを一口飲んでから、カップをテーブルに置き話し始める。

「それにしても、今日の滝沢王子の頭ポンポンは胸キュンでしたねぇ。」

ニヤニヤとしながら私をじっと見てくる優衣。

「見られてたんだ///ってか優衣は滝沢くんのこと知ってるの?」

「もちろん知ってるよぉ。有名人だもん。知らなかった葵の方が珍しいよ。」

「そうなんだ…。た、滝沢くんって凄くいい人だよね///滝沢くんの彼女って幸せだろうね。」

「葵さぁ。」

優衣のニヤニヤ顔がさっきより増しているのは気のせいだろうか?

「な、なに?」

「さてはぁ…滝沢王子に恋しちゃいましたね。」

ふふっと笑いながら両手で頬杖をつき、私を上目遣いで見ている。

「そ、そ、そんなことっ/////」

「葵ってば可愛い。顔が真っ赤だよ。」

「う〜…からかわないでよ、優衣〜。」

「ごめん、ごめん。あまりに可愛いからぁ。」

ペロッと舌を出してウィンクする優衣。

そんな仕草をする優衣の方がメチャ可愛いよっ///

「滝沢王子は、たぶんフリーだよ。ーーてか彼女がいるって話し全く聞かないなぁ。誰が告っても断ってるみたいだよ。」

パンケーキをパクッと食べながら優衣が言った。

そっか。

滝沢くん、彼女いないんだ。

良かった…

ーーって私なんて、滝沢くんが相手するわけないじゃんっ。

なに彼女がいない事にホッとしてるんだ私っ///

「あははっ、葵ってわかりやすいね。私、王子とのこと応援するから頑張ってね。」

優衣がニコニコとても楽しそうに、私にピースサインを送る。

今まで友達と恋バナなんてした事がなかったから、なんだかくすぐったいな///

私達はパンケーキを食べ終わっても話が盛り上がってしまい、気がつけば外が暗くなりかけていた。

「ヤバイっ、もうこんな時間⁈」

店内の時計を見てびっくりした。

いつもなら夕飯の支度をしている時間だった。

優衣といるのが楽しすぎて、時間の感覚がなくなってたみたい…。

「え?葵ぃ、この後なにか予定があったの?」

「ううん、予定っていうか…。ウチ父子家庭でさ家事全般は私がしてるんだ。」

「うそっ⁈ごめんねぇ。お喋りしすぎたね。」

と言って優衣は申し訳なさそうにしている。

「いやいや、私も楽しかったしっ。優衣が謝ることじゃないよ。」

私がグッと親指を立てニカッと笑うと、優衣も同じように笑ってグッと親指を立てた。

私達がお会計を済ましてお店を出ると、空は薄暗くなっていて、少し肌寒い風が吹いていた。

メイン道路やお店に街灯がつき、街がキラキラとし始める。

私がそんな綺麗な街に不釣り合いな、今日の晩ご飯のことを考えていると



「あっっっ‼︎」



と優衣が突然、大きな声を出し私の腕を引っ張った。

「な、なに⁇優衣、どうしたの⁇」

「あれってぇ…。」

と優衣は目を凝らしジッと一点を見つめている。

優衣が何を見ているのか気になって、私もその視線の先を辿った。



あっ⁈




滝沢くん…だ…



彼はやっぱりキラキラとしていて、制服なのに周りの人の視線を惹きつけている。

女子高生だけじゃなく、OLのお姉さん達の熱い視線までも集めていた。

「行くよぉっ、葵っ!」

「えっ⁇ちょ、ちょっと待って優衣っ。どこ行くの⁇」

優衣が私の腕を引っ張って、スイスイと器用に人の波をすり抜けてく。

私は訳がわからないまま、優衣に引っ張られ後をついて行った。

「滝沢くぅん。」

優衣が大きく手を振りながら、滝沢くんに声をかけた。

「えっ⁈滝沢くんと知り合いなの?」

「ううん、初対面だよぉ。」

とニコッと微笑む優衣。

… マジか⁇

初対面の相手に…しかも芸能人級のイケメンにいきなり声をかけちゃうなんて…

優衣って……スゴイ…。

突然、街中で知らない女の子に大声で呼ばれ、キョトンとしている滝沢くんだったが、後ろに私の姿を見つけてホッとしたみたいだった。

「初めましてぇ、私、葵の友達で桂 優衣って言います。ヨロシクね。」

ニコニコと超可愛い笑顔で、滝沢くんに自己紹介をする優衣。

「滝沢 涼介です。こちらこそ、ヨロシク。」

少し戸惑いながらも、キチンと自己紹介をしてくれる滝沢くんって誠実な人だなぁ。

「小辺田さん達は今帰り?」

「うん、優衣とそこのパンケーキ屋さんに行ってたんだ。滝沢くんは?」

「僕は、友達の家にDVDを借りに行ってきた帰り。」

「そうなんだ。滝沢くんってどんな映画を観るの?」

「基本的にはなんでも観るけど、そうだなぁ…サスペンスが多いかな。」

「私もサスペンス好きだよ。サスペンスっていえばーーー」

他愛も無い話しをしながら、しばらく三
人で歩いていると急に優衣が立ち止まって

「あの…これから私、友達と約束してて一緒に帰れないの。悪いけど滝沢くん、葵を家まで送ってくれないかなぁ?」

両手を顔の前で可愛く合わせて、滝沢くんにお願いしている。

「へっ⁈ちょっと待って優衣、何言ってるの?私一人で大丈夫だよっ。」

私は慌てて優衣の合わさった手を下ろそうと、優衣の手を握る。

「そうだね、もう暗いし。僕で良かったら家まで送るよ。」

嫌な顔ひとつしないで、ニッコリと笑って返事をする滝沢くん。

「うわっ助かるぅ。ありがとう、滝沢くん。」

優衣が私の手をパシッと軽く叩いてから振りほどき、滝沢くんにお礼を言っている。

パシッって… 痛いよ…優衣。

「桂さんは大丈夫?」

「うんっ、大丈夫。男友達も一緒だからその人に送ってもらうよ。じゃあ、私、行くねぇ。また明日ね、葵。」

と言って優衣は、元気にバイバイと手を振って走って行ってしまった。

嘘でしょ…。

いきなり二人っきりだなんて耐えれないよっ///

どうしたらいいのよーっっ‼︎

「じゃ、行こっか。あれ?どうしたの、大丈夫?小辺田さん。」

「だ、大丈夫。ヨロシクお願いします///。」

優衣のやつ絶対ワザとだ。

友達と約束なんて、ひと言も言ってなかったじゃん。

♪♪♪♪♪〜

LIMEの着信音が鳴り、私は鞄のポケットからスマホを取り出して確認する。

あ…優衣からだ。

【 どうだった?私のアシスト。滝沢王子と楽しく下校デートしてね。お礼は苺ミルクでいいよ。】

なんて内容のメールだった。

やっぱりワザとか…。

仕方ない、明日は優衣に苺ミルクを買ってやるか。

でも、いきなり2人っきりなんて緊張するよっ///

「それにしても、桂さんってフレンドリーだね。初対面だとは思えなかったよ。」

ニコニコといつも通りの笑顔の滝沢くん。

緊張してるのは、やっぱり私だけか…

そう思うと、なんだか私だけバカみたいだな。

リラックス、リラックス。

「だよね。私も知り合ったばかりなのに、もう何年も前からの友達って感じだもん。」

「…僕の友達にもあのフレンドリーさを分けてあげてほしいよ。」

滝沢くんが、ふぅ…と暗くなった空を見上げながら溜め息をついた。

「お友達は人見知りする人なの?」

「う〜ん…人見知りというか…女の子が苦手みたいなんだよね。」

苦笑いをする滝沢くん。

「 そのお友達、過去に何か嫌な思いでもしたのかなぁ?」

「どうだろね。その人、僕の幼なじみなんだけど…たぶんモテ過ぎが原因だと思うんだよね。」

滝沢くんにモテ過ぎって言われるその幼なじみって、一体どんだけイケメンだ⁈

その後も滝沢くんと話しをしながら帰ったが、緊張しすぎて余り覚えてないという残念なことをしてしまった。