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今日は朝から雨が降っていた。

私の心と同じ…



「お前…涼介に大事にしてもらえよ。」



昨日の言葉が頭の中でリフレインする。

どうして…あんな事を言ったの?

私の気持ちはどうなるの?

優しくするだけして………

私の心に入り込んできたくせに、急に突き放すようなこと言わないでよ。

こんなに好きにさせといて酷いよ…。

トボトボと元気なく教室まで向かう足取りはとても重い。

ガラ……

教室のドアを開けると優衣の笑顔が一番に目に入った。

「おはよっ、葵。」

いつもの優衣だ…。

「おはよ…ぅ…。」

優衣の笑顔に気が緩みポロリと涙が零れた。

「えっ、えっ⁈葵っどうしたの??」

優衣は慌てて入口にいる私のところまで来て頭を撫でてくれる。

「ゎたし…ぅっく…。」

「ちょっと、私について来て。」

優衣は私の手を引いて教室を出た。







「ここなら、ゆっくりと話しができるでしょ。」

優衣に連れてこられたここは屋上へと続く階段。

人気も無くとても静かで雨の降る音だけが聞こえてくる。

優衣に誘導され私たちは隣り合わせに座った。

雨の日のせいか少し床が冷んやりとしている。

「何があったの?」と私の頬にハンカチを当てながら優しく聞いてくれる優衣。

胸が苦しくて苦しくて耐えられず、私は今までの事を全て優衣に話した。

何度も大賀見賀が助けてくれた事、落ち込んでる時に優しく慰めてくれた事。

からかわれてキッチンでキスをされた事、白咲くんに付けられたキスマークに私が望んで上書きしてもらった事…。

滝沢くんに告白されて断った事、大賀見の事が好きだと自覚したとたんに突き放された事…………。

「滝沢くんに大事にしてもらえって…私に対して…ひっく……特別な気持ちは無いって事だよね……?ぅう…ひっく…。」

優しくされて心のどこかで期待してた。

ひょっとして、私達は両想いじゃないか?って……。

バカ過ぎるよね?

笑っちゃうよね?

泣かないと決めてこれまで生きてきたのに、止めようと思っても涙が止まらない。

頬に当てられているピンク色のハンカチが、どんどん涙で色が濃くなっていく。

優衣が私の頭に手をまわし引き寄せた。

コツンと私達の頭が合わさる。

「泣かないで…葵。大丈夫、大丈夫だよ。私は葵の隣にずっと居るょ。もう、絶対に離れない。」

優衣の言葉がすぅと心に入ってきて、私に安心感を与える。

優衣のこの言葉が、こんなにも心に沁みて安心感を与えるのはなぜ?

あぁ…

そっか…………

私、好きな人に離れて行かれるのが怖かったんだ…。

ただ大賀見と想いが通じ合わなかった事が悲しいのだと思ってた。

私のこの酷く不安な気持ちは、それだけじゃ無かったんだ。

また、ママがいなくなった時みたいに一人になるのが怖かったんだ…。

「ありがとう…優衣。大好きだよ。」

「私も葵のこと、大好きだよ。」

私達は顔を見合わせて笑った。

そのまま二人で朝のSHRをさぼって担任の小林くんにちょっぴり怒られた。

怒られてるのに優衣の顔が幸せそうで不思議に思ってたら、あとから実は優衣は小林くんの事が好きなのだと知った。