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私と滝沢くんは、ハイキングコースの方へ大賀見を探しに行った。

ハイキングコースの道は、沢山の木々に覆われていて、木漏れ日が差し込みとても綺麗だ。

風も抜けとても涼しくて気持ちがいい。

「本当、大賀見ってサボリ魔だよね。どこに行っちゃったんだろうね?」

「ハルは自由だからね。」

ニッコリと柔らかく笑った滝沢くんは、今のこの景色にピッタリで爽やかで涼しげだ。

本当、大賀見と滝沢くんって正反対だよね?

大賀見って全く爽やかじゃないし、どっちかっていうと夜の街の方が似合いそうだもんね。

私は、ふふ…と大賀見の事を考えて笑ってしまった。

「どうしたの?」って滝沢くんに聞かれたけど、わざわざ言う事でもないと思ったので「なんでもないよ」と答えた。

「でも、なんで沢口さんと一緒なんだろうね。ハルが女の子と一緒にいるなんて考えられないよ。」

そうなんだよね…

しかも、あの茉莉花ちゃんとだなんて。

なんだか胸の辺りがモヤッとしたので手を当ててみる。

「ハルが他の女の子と居ると思うとショック?」

「え?」

「なんとなく、さっきから小辺田さんが落ち込んでるような気がして。」

「そ、そんな事ないよっ///」

「本当?だったら……」

滝沢くんが突然、私の手首を掴み立ち止まった。

ドクンッ…

掴まれた手首から滝沢くんの熱が伝わってきて、心臓が大きく跳ね上がる。

い、いつものスキンシップだよね??

「た、滝沢くん?」

さっきまでの爽やかな笑顔が滝沢くんから消え、今まで見た事のないほど真剣な表情になっていた。



「僕と付き合ってくれませんか?」




私を真っ直ぐに見つめる滝沢くん。

「…………え?」

滝沢くんから発せられた言葉に耳を疑う。

頭の中がグルグルして私が整理できないでいると

滝沢くんは私の両手をそっと握りしめた。



「小辺田さんが好きです。
僕と付き合って下さい。」



もう一度ゆっくりと言われて、ようやく私は告白されたのだと認識する。

「あ、あのっ………私っ///」

予想もしていなかった事がおこりパニックなった。

あの校内一、爽やかイケメンの滝沢くんが私なんかを好きになってくれるなんて、信じられない///

初恋の人が告白してくれてるんだよ。

早く返事しなきゃ。

『私も好きです』って……

なのに、なんで言えないの?

簡単でしょ?

答えは出てるはずじゃないの?

しばらくの間、返事ができなくて、風で揺れる緑の葉の音だけが二人を包んでいた。



ドンッ…………




風に乗って何かが打ち付けられる物音が聞こえてきた。

その音の後すぐに怒鳴り声が聞こえてくる。

この声は……………………………

「………大賀見?」

ちょっと待って⁈

茉莉花ちゃんと一緒にいるんだよね?

なに?さっきの物音と怒鳴り声は??

「行こうっ!小辺田さんっ‼︎」

なにか危険を察知した滝沢くんは、私の手を引っ張り、声がした方へ走り出した。

少し奥に進むと、大賀見と茉莉花ちゃんの姿が見えてくる。

………穏やかな状況ではない事が、ひと目でわかった。

大賀見が茉莉花ちゃんを木に押し付け、胸ぐらを掴んでいる。

「何してるのよっ‼︎」

私は駆け寄って茉莉花ちゃんの前に立ち、大賀見を力一杯に押し退けた。

滝沢くんは、大賀見を後ろから両脇に腕を入れ引き離す。

私と目が合うと大賀見はハッとして我に返ったようだった。

「………子ブタ。」

「女の子に暴力を振るうなんて、最低だよっ‼︎」

まさか大賀見が女の子に手をあげるとは想像もしてなかったので、私はショックを隠しきれない。

「………悪い。」

とても辛そうな表情で横を向いた大賀見。

なんでアンタがそんな顔するのよ。

「大丈夫?茉莉花ちゃん。」

茉莉花ちゃんの事が心配で、私は彼女の震える肩にそっと手を置いた。



パシッ‼︎




「痛っ!」




肩に置いた私の手はもの凄い勢いで弾かれた。

「触らないでっ‼︎」

茉莉花ちゃんは、とても強い視線を私にぶつけてくる。

「なにすんだよっ!お前っ‼︎」

そう言って大賀見は私をグッと力強く引き寄せ、茉莉花ちゃんとの距離をとった。

「なんでぇー?なんで葵ちゃんなのぉー?
春斗くんは茉莉花の彼氏になるはずでしょっ!
こんな女のどこがいいのよっ‼︎」

ゆっくりと甘え口調から、厳しい口調に変わっていく茉莉花ちゃんに驚く。

「勘違い女のお前より、こいつの方が何倍もいい女だよ。」

大賀見が私を後ろから抱きしめたまま答えた。

茉莉花ちゃんは悔しそうな表情でキュッと唇を噛む。

そして…

私をキッと睨みつけ

「アンタなんか……」

その後、茉莉花ちゃんが私の一番傷つく言葉を口にする。




「父親と血が繋がってないくせにっ‼︎」




静かで爽やかな緑の中

茉莉花ちゃんの声が響き渡る。