「千花ちゃん、見て。また、来てるよ」


私の横で、従姉の桃子ちゃんがひそひそ声で言った。

あの不審な男性に興味津々なのは、私だけじゃない。
一緒にアルバイトしている桃子ちゃんも気になっているのだ。


不審なお客様は知り合いがいないことを確認し終えたようだ。
ささーっといつもどおり、目的の場所へ向かう。

そこで立ち尽くし数分考え、辺りを見回すと2冊の文庫を手にした。
そのまま早足でレジにやってくる。

うんうん、いつもの流れね。

どさっと置かれた文庫には、可愛い女の子とぺったりくっついた男の子の表紙。
もう一冊はびっくりした顔のOL風の女子と、迫っているスーツ姿の男性の絵。

いわゆる、恋愛小説ってジャンルの文庫だ。