☆
突き飛ばしたはずの手には──力が入っていなかった。
逆に自分が、後方によろめいてしまう。
結果的には彼から離れられたが、ジョウは壁に背中を預けることとなった。
「それは…いらない」
震える首を、横に振って拒絶する。
「バカな女王だ…死神の方ばかり向いて」
なのに。
ケイは、目を細めて彼女を見ていた。
一歩。
近づいてくる。
もう、ジョウには壁しかないというのに。
そこに。
すぐそこに──立った。
自分以外の影が、自分を覆う。
「死神より…自分を見ろ。自分自身の命を」
大きな手が。
ジョウの左胸に、押し当てられる。
瞬間に、大きく跳ねた。
自分の心臓が。
「まだ、死神が持っていくには…イキがいいぞ」
手のひらの鼓動を感じるように、ケイは目を伏せる。
そのまつげを見上げたら。
なお、ジョウの胸は足を速めた。
「大丈夫だ」
まぶたが、上がる。
「お前さんは…死なないよ」
薄く微笑みながら、彼は胸に置いた手を離した。
確かにあったぬくもりが、ジョウの命から離れていく。
あっと。
その温度の消失に、身体が震えそうになった。
ほんのわずかな、末端の温度に過ぎないそれは、ジョウに大きな喪失感を与えたのだ。
けれど。
手は、遠くまで行ってはしまわなかった。
彼女の頬に、場所を変えたのだ。
今度は──最初から優しい唇だった。
突き飛ばしたはずの手には──力が入っていなかった。
逆に自分が、後方によろめいてしまう。
結果的には彼から離れられたが、ジョウは壁に背中を預けることとなった。
「それは…いらない」
震える首を、横に振って拒絶する。
「バカな女王だ…死神の方ばかり向いて」
なのに。
ケイは、目を細めて彼女を見ていた。
一歩。
近づいてくる。
もう、ジョウには壁しかないというのに。
そこに。
すぐそこに──立った。
自分以外の影が、自分を覆う。
「死神より…自分を見ろ。自分自身の命を」
大きな手が。
ジョウの左胸に、押し当てられる。
瞬間に、大きく跳ねた。
自分の心臓が。
「まだ、死神が持っていくには…イキがいいぞ」
手のひらの鼓動を感じるように、ケイは目を伏せる。
そのまつげを見上げたら。
なお、ジョウの胸は足を速めた。
「大丈夫だ」
まぶたが、上がる。
「お前さんは…死なないよ」
薄く微笑みながら、彼は胸に置いた手を離した。
確かにあったぬくもりが、ジョウの命から離れていく。
あっと。
その温度の消失に、身体が震えそうになった。
ほんのわずかな、末端の温度に過ぎないそれは、ジョウに大きな喪失感を与えたのだ。
けれど。
手は、遠くまで行ってはしまわなかった。
彼女の頬に、場所を変えたのだ。
今度は──最初から優しい唇だった。


