☆
「おい!」
と、抗議しかけたジョウは、後ろから簡単に部屋の中に押し込まれた。
まだ掴まれたままの右手が、今度は逆の向きの軸になった時。
ドアは──閉じた。
自分と、もう一人を飲み込んだまま。
狭く閉鎖された、しかし自分の部屋。
なのに。
たった一人、他人がいるだけで、何もかもが違うものに見えた。
当たり前みたいにあった物たちは、みんな息をひそめ、ぴりぴりした緊張感でジョウの頬を撫でる。
「な…に…してんだ」
上ずりそうになる声を、彼女はおさえようとした。
「オレね」
手を離しながらも、ケイの目は自分を射抜いている。
そこから、一歩も動かないように。
変人でヘラヘラした男が、津波の直前のように、ざぁっと引いたのが分かる。
「オレはね…遺品はもらわないよ」
瞳が、降りてくる。
優しさの引ききった瞳が。
「……っ!」
気づいたら。
唇を──貪られていた。
そうとしか、表現のしようがない。
唇もその内側も、ケイは遠慮も容赦もなく貪り尽くす。
一体何が起きているのか。
その突然の豹変に、ジョウは動けずにいた。
だが、少なくとも彼女の行動が、この男の許されない何かを踏んだのは分かった。
嵐の間、ジョウはただ風雨に打たれるばかり。
だが。
ゆっくりと少しずつ。
ケイが冷静さを取り戻していくのが分かるほど、本当にゆっくりと、唇が優しいものに変わっていく。
それはそれで、ジョウを打ちのめした。
撫でるような、愛しむ口づけになってしまったからだ。
やめてくれ。
目頭が、熱くなる。
やめてくれ──優しくされたいわけじゃないんだ。
「おい!」
と、抗議しかけたジョウは、後ろから簡単に部屋の中に押し込まれた。
まだ掴まれたままの右手が、今度は逆の向きの軸になった時。
ドアは──閉じた。
自分と、もう一人を飲み込んだまま。
狭く閉鎖された、しかし自分の部屋。
なのに。
たった一人、他人がいるだけで、何もかもが違うものに見えた。
当たり前みたいにあった物たちは、みんな息をひそめ、ぴりぴりした緊張感でジョウの頬を撫でる。
「な…に…してんだ」
上ずりそうになる声を、彼女はおさえようとした。
「オレね」
手を離しながらも、ケイの目は自分を射抜いている。
そこから、一歩も動かないように。
変人でヘラヘラした男が、津波の直前のように、ざぁっと引いたのが分かる。
「オレはね…遺品はもらわないよ」
瞳が、降りてくる。
優しさの引ききった瞳が。
「……っ!」
気づいたら。
唇を──貪られていた。
そうとしか、表現のしようがない。
唇もその内側も、ケイは遠慮も容赦もなく貪り尽くす。
一体何が起きているのか。
その突然の豹変に、ジョウは動けずにいた。
だが、少なくとも彼女の行動が、この男の許されない何かを踏んだのは分かった。
嵐の間、ジョウはただ風雨に打たれるばかり。
だが。
ゆっくりと少しずつ。
ケイが冷静さを取り戻していくのが分かるほど、本当にゆっくりと、唇が優しいものに変わっていく。
それはそれで、ジョウを打ちのめした。
撫でるような、愛しむ口づけになってしまったからだ。
やめてくれ。
目頭が、熱くなる。
やめてくれ──優しくされたいわけじゃないんだ。


