VS IV Omnibus1 撃墜女王



「おい!」

 と、抗議しかけたジョウは、後ろから簡単に部屋の中に押し込まれた。

 まだ掴まれたままの右手が、今度は逆の向きの軸になった時。

 ドアは──閉じた。

 自分と、もう一人を飲み込んだまま。

 狭く閉鎖された、しかし自分の部屋。

 なのに。

 たった一人、他人がいるだけで、何もかもが違うものに見えた。

 当たり前みたいにあった物たちは、みんな息をひそめ、ぴりぴりした緊張感でジョウの頬を撫でる。

「な…に…してんだ」

 上ずりそうになる声を、彼女はおさえようとした。

「オレね」

 手を離しながらも、ケイの目は自分を射抜いている。

 そこから、一歩も動かないように。

 変人でヘラヘラした男が、津波の直前のように、ざぁっと引いたのが分かる。

「オレはね…遺品はもらわないよ」

 瞳が、降りてくる。

 優しさの引ききった瞳が。

「……っ!」

 気づいたら。

 唇を──貪られていた。

 そうとしか、表現のしようがない。

 唇もその内側も、ケイは遠慮も容赦もなく貪り尽くす。

 一体何が起きているのか。

 その突然の豹変に、ジョウは動けずにいた。

 だが、少なくとも彼女の行動が、この男の許されない何かを踏んだのは分かった。

 嵐の間、ジョウはただ風雨に打たれるばかり。

 だが。

 ゆっくりと少しずつ。

 ケイが冷静さを取り戻していくのが分かるほど、本当にゆっくりと、唇が優しいものに変わっていく。

 それはそれで、ジョウを打ちのめした。

 撫でるような、愛しむ口づけになってしまったからだ。

 やめてくれ。

 目頭が、熱くなる。

 やめてくれ──優しくされたいわけじゃないんだ。