VS IV Omnibus1 撃墜女王



「ちょっと、そこで待っててくれ」

 部屋の前。

 そう言いおくと、ジョウは自室へと入った。

 たいした持ち物はない。

 家族の写真が飾ってある以外は、本当に殺風景な部屋だ。

 棚を開け、何か渡すにふさわしいものがないかと、急いで探す。

 正装時用の化粧品、わずかのアクセサリー。

 その中から、ケイはネックレスを引っ張り出した。

 母親が、くれたもののひとつだ。

 細い鎖なので、男の首には似合わないだろうが、邪魔になるようなものではないから、受け取ってくれそうだ。

「待たせ…」

 ドアを出て廊下に戻ると、ケイが男と話をしていた。

 知り合いだろうか。

「あ、では、失礼します」

 男は、ケイとジョウにスチャっと敬礼すると、去っていった。

 明らかなる、上官に対する態度だ。

 だが、二人を見る目が「ジョウにとって、かゆくなるようなもの」を含んでいる気がした。

 それを、首を震わせて振り払う。

「知り合いか?」

 ジョウと同じ、パイロット所属の男だった。

 しかし、向こうはごく最近配属されたようなペーペーに近いはずだ。

 そんなほぼ新人と知り合い、というのも奇妙に思えたが。

「……」

 ケイは、言葉では答えず、苦笑で返した。