VS IV Omnibus1 撃墜女王



 交渉も、終戦も、戦後処理も。

 人間側には、現時点で何の手立てもないのだ。

 防衛ラインを押し戻し、頼むから早くあきらめてくれと祈るしかない──喜劇の戦争。

 見えないものを撃墜して、「撃墜王」なのだ。

 機体が感知して、自動でカウントしているのだが、ジョウにとっては笑い話と大差なかった。

 ただ。

 間違いなく相手は存在していて、一歩間違えれば、簡単に悲劇がとって変わることだけは確かだった。

 まあ、ありがたいのは。

 ジョウは、時々それを思う。

 撃墜したところで、一切の罪悪感など感じないところだ。

 それと。

 人間同士の争いが、なくなったこと。

 外敵が現れ、人間の種そのものが危険にさらされた時、人とはこんなにも団結できるものなのか。

 人間同士で争ってる暇がなくなった、と言った方が正しいか。

 その点だけは、人間はアイヴィーに感謝していいだろう。

 陸戦と空戦が出るということは、今度の任務は、アイヴィーが占領している星に降下して、奪還に向けた足がかりを作ること。

 電撃急襲のため、一番槍にもっとも適した実力者たちが選ばれている、ということか。

 その道を通って、後から大部隊が入ってくる、という流れだろう。

「おーい」

 向かいの席から呼びかけられて、ジョウはハッとした。

 行儀悪く、フォークで人の料理を指すケイ。

「冷めるぞ」

 目が半開きなのは、ジョウの心がここになかったせいか。

「ああ」

 答えて、自分の料理にフォークを突き刺しながらも、彼女は胸がいっぱいになっていくのを感じた。

 ふぅ。

「なぁ」

 料理を口元まで運べないまま、彼を呼んでみる。

「この後、時間あるなら、ちょっとあたしの部屋に寄らないか? あ、ドアの前まで、な」

 変な誤解を受けないように、ジョウは最後の点をきっちり言葉にした。

 彼は──変人だし軽いが、悪いやつではない。

 そして、おそらく今日を境に、もう二度と会えない。

 そんな男に。

 自己満足だと分かっていても、何か渡したくなったのだ。

 家族以外の、誰か一人にくらい──自分の生きた証を持っていてほしかった。