VS IV Omnibus1 撃墜女王



 この男が、ついていたのは。

 いまのジョウがすっかり疲れていて、なおかつ、自分の命が長くないなと思っている時に再会したことか。

「いいぜ」

 戦時というのは、人の判断力を平気でひねるものだ。

「そう言わずに、ご飯くらい…って、え!?」

 まず拒否が来ると思っていたらしいケイは、先回りして答えかけた言葉を途中でひっくり返した。

 じっと、ジョウを見る。

 真意を一瞬探られる目になったが、すぐにふぬけた笑いに変えた。

「よし、気が変わる前に行こう」

 嬉しそうに伸ばされた手が、ひょいっとジョウの手を掴んで引っ張る。

「おい…!」

 手を引っ張られるほど、急ぐ必要などない。

 ここはまだ、軍の執務エリアで誰が見ているか──って。

 ジョウは、ふと疑問をよぎらせた。

「なんで、私服でこんなとこにいるんだ?」

「それなんだよ」

 引っ張りながら先を行くケイは、不機嫌な目を一瞬だけ後方に見せた。

「大体、休暇で墓参りに来ただけだから、他の宙母で呼び出されるなんて思ってないだろ?」

 だから、私服で十分だと行ったら──そう、ケイが続ける。

 みなまで言われなくても、ジョウは結果が分かった。

 軍の上の方など、規律の塊で。

 そんなところに、アザ顔ぶらさげて私服で行くなんて。

「長かったなぁ…本題に入るまでが」

 ほとほとうんざりという声が、想像力をかきたて、ジョウの笑いのスイッチを踏んでしまった。

「あんた…バカだろ」

 変人は、貫くのが難しい。

 特に、階級という壁の前では。

 なのに、上官の前でさえ、彼は変人を貫いたのだ。

 いっそすがすがしい。

 ジョウでさえ、日和るのだ。

 面倒な説教が増えるのが、ウザったくて。

 変人を貫く男は、それでも中佐。

 この階級社会で、この変人はどうやってそこまで上ったのか。

「バカもいいもんだな…笑ってくれたし」

 バカと呼ばれて喜ぶ上官が──どこにいる。