VS IV Omnibus1 撃墜女王



 軍が、敗け試合でもないのに、いきなりパペットを投入するとは──相当の本気だ。

 ただ。

 パペットの前に出ると、味方でも容赦なく引きちぎられるという、黒い噂もあった。

 ツレの大男が、任務完了を告げるまで、ひたすら敵をちぎり続けるらしい。

 ゾッとしねぇな。

 それが、機械であることを祈りたいくらいだ。

 自分が、陸戦部隊でなかったことを、いま少しだけ感謝しそうになった。

 地上にパペット。

 空にエース群。

 これで負けたら、軍そのものの敗北と同じだ。

 ただ。

 そんな戦局よりも、少しだけ、ジョウには思うところがある。

 他の「撃墜王」に会うのは、これが初めてなのだ。

 彼らは、何を考えているのだろう。

 孤独なのか、憂欝なのか、はたまた楽しんでいるのか。

 同じ目線の人間が、どう生きているのか気になった。

「今回の作戦で、ぜひ撃墜数を伸ばし、DAを狙って欲しいものだな」

 上は気楽なことを言う。

 DAとは、ダブルエースのことだ。

 エース=100機=撃墜王。

 その計算からいくと、ダブルエースは200機だ。

 さすがに、人間の域を超える話になってきそうだった。

 第一。

 狙う気がない。

「生きて帰ってきて、考えます」

 ジョウは、適当にはぐらかした。

 DAの心配より、新しい遺書の心配の方が先だ。

 出発を明日と言い渡され、彼女はようやく解放された。

 どっと、疲れがくる。

 このまま。

 明日まで、部屋で寝てしまうか。

 そう考えかけたジョウの前に。

「おっ…奇遇だね」

 昨日、ブン殴って置き去りにした男が現われた。

 頬には、立派なあざが残ったまま。

 まだ、いたのか。

 ジョウと違って、優雅な休暇生活は続いているのか。

「あいてるなら、一緒に食事でもどう?」

 そして、さっぱり懲りていなかった。