『魔女の仕業に違いない』
『え?』
『おめ、何ふざけた事言ってるんだ!』
『てめぇ、そんなこと尚更あるわけが無い』
『いや、逆だ、それしか考えられねぇだろう!』

民衆の一人が言い放った言葉は波紋となり国中に広がった。

『民衆の数を一気に減らせば、食料が足りなくなる事もない』

確かに、土地の割合に比べ、人口密度が増えすぎたせいで、ちょっと農作物の不作が続くと簡単に食糧難に陥る国になってしまって、この数年餓死する者まで増えている状況だった。

『宴と言う機会を使って、食い物や女や娯楽という餌で民衆が城に集まったのを良いことに集団殺人を図って毒を食わせたに違いない』
『まぁ、仕方なく、そうせざるを得なかったのかもしれないけどな』
『だからって、こんなに一生懸命働いている俺たちを?』
『よく考えてみろ、毒に使われたのは異国の樹液だっていうじゃねぇか。どうやって、それを手に入れるんだ?』
『さ、さぁ?どうやって?』
『魔法の蒸篭さえあれば簡単だ』
『そ、そうか・・・。魔女様、信じてたのに。っくしょう!』

“魔法の蒸篭”の存在は、そんないい加減な推測を簡単に納得させるものになってしまった。

『犯人は魔女だって?』
『まさか、あの女神の様な三姉妹が?』
『女神の様な姿はただの見せ掛け』
『魔女は魔女だ』

『かつては世界を暗黒に染めた隣国の黒魔女アヴィエータと血縁関係にある魔女達さ』
『人間の心を油断させ、再びこの世に混乱を巻き起こそうとしているに違いない』
『皇太后がお亡くなりになったのも魔女の仕業に違いない』

『今、王が病に伏せているのも魔女の仕業に違いない』

そんな噂がどんどん広がった。