優勝の興奮が冷めないまま、みんなは教室から出て帰路についた。

「本当に優勝しちゃったね……」

「うん」

真子と英介を除いた私たち委員4人は、まだ教室に残っていた。

優勝の余韻に浸りたいのと、英介が真子を誘い出したのを見て落ち着かなかったのだ。

「あ!真子たちだ!」

窓から見えるグラウンドの隅に、2人の姿があった。

バレないように、窓から顔だけ出して見守る。

頑張れ、英介!

夕日に照らされた2人のシルエット。

会話は聞こえてこないが、ふと英介が笑顔を見せた。

「……あ!」

咲苗と視線を交わしうなづく。

「うまくいった、みたいだな」

いつもは声の大きい勝も、そっと囁いた。

「よっしゃ!」

4人で、ハイタッチ。

勝の大きな手。

咲苗の小さくて丸い手。

源の細い指を持つ手。

それぞれの手から、喜びが伝わる。

「いいなぁ、私も告白しよっかな……」

キラキラした目で咲苗が言う。

「えっ?咲苗、誰かいんのか?」

いつもの大きな声で勝が言うから、笑ってしまう。

「そりゃ、私だって!……部活の先輩……引退するまでにはって思ってるけど」

「そっかぁ!」

片思いか。

ドキドキしたり、フワフワしたり。

みんなの、恋のゆくえ。

私も、英介たちのように一歩前に進めたらいいな。

そんな勇気を、2人から……そしてクラスのみんなからもらった気がする。

こんな風に、自分の成長を感じられるなんて2年前には夢にも思っていなかった。