あの頃のように笑いあえたら


「B組〜! 頑張れ〜!」

「ファイトーッ!」

女子の声援も負けてはいない。

男子たちの、必死に棒に食らいつく表情、自分の陣地へと運べた時の笑顔。

棒を持って行かれそうになっている仲間を助けに向かう。

青の、そして色とりどりのハチマキが、なびいている。

「……なんか、かっこいい」

思わずつぶやいていた。

「ふふん、誰が〜?」

隣りで応援している咲苗が意味深に顔を覗かせる。

「いやいや、みんなだよ」

「ふーん」

もちろん本当は、源に釘付けだった。

いつもは淡々としてあまり表情を変えない源が、楽しそうに、必死に、嬉しそうに、コロコロと変える表情に目を奪われていた。

弾けるような、笑顔がそこにはあった。


ーーよかった、ちゃんと笑えてる。


当たり前だけれど、源には心から笑えない、そんな時期があったのだ。