あの頃のように笑いあえたら

「私は、愛㮈でうる、なんです」

「……うん」

「本当はみんなに、愛㮈もうるも知ってもらいたいのかも……」

川本さんの顔を見ながら言った自分の声は、思いのほか心に響いた。

優しくうなづく川本さん。

分かっていたんだ、たぶん

フワフワして定まらない気持ちを、自分の力で集めてまとめて、言葉にして紡ぐ。

それができるのが、この場なんだ。

「……じゃあ、今日はこの辺で。」

川本さんが私の気持ちを察して言う。

「はい、ありがとうございます。」

私はそう言って部屋を出た。

自分の気持ちは再確認できたが、この先どうするのか、どうしたらいいのかはまだ分からない。

それでも、スッと軽くなった胸の奥。軽やかな足取りで建物をあとにする。

私は、以前から密かに考えていた。

将来、川本さんのような仕事ができたらいいな。

少し弱っていて、でも自力で這い上がろうとしている人はたくさんいる。
そんな人たちを、救えたら。