あの頃のように笑いあえたら

「気づいてるなら、早く言ってくれたらよかったのに」

私ひとり、気づかれまいと頑張ってたの?いやだな……。

また、少しの沈黙。

「なんかおまえ、隠しておきたいんだろうなって思ってさ」

静かな教室に、予想していなかった優しい言葉が響く。

「え?」

やっと顔を上げられた。

源の柔らかそうな髪が、窓の陽射しにキラキラ輝いている。

キレイな髪……。

自分が今、どんな感情を抱いているのか全く分からなかった。

「学校でも、誰にも話してねーし」

源はもう、私から目を離してプリントまとめを再開しているから、どんな表情をしているのか分からない。

「ああ、うん」

もしかして、気使ってくれてた?

「ずっと気づかないフリするつもりだったけど……なんかバレないように必死なおまえ見てたらさ、無理してんなって思って。」

「え?」

ー ーずっと気づかないフリ?

「だったら言ってやった方がラクかなって」

私のことを考えて?

目の前にいる源が、急に大人に見えてきた。

「そっか。ごめん」