あの頃のように笑いあえたら

「おまえ、喘息なのか?」

しまい忘れていた吸入薬が目に入ったのか、源が聞いてきた。

「あ、うん。でももう大丈夫。さっきはブランケットありがとうね」

源のまっすぐな視線を感じて、私はどこを見ていいのか分からなくなる。

「それ、松岡さんから借りたから、終わったら返しといて」

「……そうか、分かった」

ーー 源の顔が見たい。

愛㮈ではなく『うる』を見る、源を。

私が荷物をしまい終わると源が言った。

「……あんま、無理すんなよ」

そして、そのままバスを降りて行ってしまった。

ー ー ドキドキ、キュン

『無理、すんなよ』

優しい源の声が頭の中に響く。

そんな、優しい言葉、言えるんだ。

『うる』には、言えるんだ。