「なかなか可愛いわよね〜、あの子」

松岡さんの横に立つ源を見ながら大森さんが言う。

「そうですかぁ?…ケホケホッ」

寒さと海風のせいで、咳が出始めた。

もう、頭の中でどうしようが渦巻いている。

「あれ?風邪?大丈夫?」

「いえ、大丈夫です〜」

喘息は長い付き合いだし、もうだいぶ自分でコントロールできる。

でもやっぱりこの、春の季節は苦手だ。

今はそんなことよりも、源のことだ。

「じゃ、次うるちゃんお願いします」

「あ、はーい」

海をバックに作り笑顔。

キレイな海……仕事じゃなくて、遊びに来たかったな。

みんなと来たら、きっと楽しいんだろうな。

チラチラと視界に入る源が気になるが、おそらく私だと気づいてはないのだろう、視線は全く感じない。

「いいね、うるちゃん〜、ちょっと上を見上げる感じ、もらえる〜?」

松岡さんの声に、真っ青な空を見上げ、眩しさで目を細める。