あの頃のように笑いあえたら

「ふーん、顔では選ばないってことだね」
「……まー、そうかな」

きっとそうなんだろうと分かっていたけど、素直に答えるその姿に私はまたときめいてしまう。

カンナのこともそうだ。

人見知りということもあるが、あまり知らない相手の誘いを、源はきっと断るだろう、とどこかで思っていた。

源の横顔を見つめる。
こんな風に2人だけで話せる時間はあまりない。

みんなといるのがイヤなんじゃなくて、源とは2人で向かい合いたいんだ。

「じゃね、また明日」
「おお」

私が乗り換える駅になり、夢のような20分間はあっと言う間に終わる。

ホームに降り階段へと向かう足を止めて、本当は振り返りたい。

閉まったドアの向こう側で、君は私を見てくれているのだろうか。

それとももう、違うどこかを、違う誰かを見ているのだろうか……。