あの頃のように笑いあえたら

すぐに電車が来て、2人一緒に乗り込む。

車内はたくさんの学生たちの帰宅ラッシュで賑やかだった。

電車のドア付近に、向かい合って立つ2人。

「おまえ、大丈夫か?」
「え?何が?」

不意に聞かれ、一瞬何を心配されてるのか分からなかった。

「女子たちに囲まれてヤイヤイ言われてたって……」

少し、言いづらそうな源。

「ああ」

なんで知ってるんだろ?あの時、源は教室にいなかったはずだ。

「勝にちょっと聞いた」

ちゃんと私の疑問を見透かしている。

「あ、そうか。大丈夫。でも、ちゃんと話しはできなかったかな……」

ざわついているはずの車内。
だけど私と源の空間にだけ、なぜか静かな時間を感じる。

「そっか。まあ、そんな状況じゃ無理だろうな」
「うん……」

窓の外側には水滴が流れている。

その水滴をなぞるフリをして、うっすらと窓に映る源の腕にそっと触れる。